
テレフォン -約束-
第8章 冬の蝶
愛情があるとはいえ、度々の電話での会話には時折、花も咲かないこともあり、少しずつドライな会話も増えてゆきつつありました
それでも、電話にしがみつくことでしか存在を示すことが出来ない“まー君”は
時代遅れのペアルックをアタシに強要し、自分だけ寸足らずのそれを着ているような独走や1人よがりみたいなものを感じ
アタシが相違する意見を言えば・・・・
・・・・1分
・・・・5分
いいえ、時には20分以上もの間、受話器の向こうで沈黙することがありました
そんな、裏目裏目に流れる膠(こう)着する時間に諭す労力は相当に必要で
ぶつけようのない不満を撒き散らすことを知らない性格の“無言”は耳をつんざくようでもありました
それは、互いのイコールから離れる価値観を示しているようで
そして、無言のまま突然に電話を切られちゃうと…
仲直りまでの時間は、壊れた硝子の破片を一片ずつ
拾い集め
寄せ集め
接着剤で元に戻すような気の遠くなる作業に感じました
