
テレフォン -約束-
第4章 シゴト
部屋は他の嬢達が当たり障りのない会話でいつも賑やか
・・・・でも
個人の事情も情報も知らない
・・・・でもでも
ここにいる理由も知らない
聞きもしないし、聞かれない
“暗黙の掟”といえば大袈裟だけど、逆流の先にある“理由の源流”へ辿り着けば、その原因はガラス張りみたいに明白だからです
そんな、みんなは話をしながら、思い思いにメイクをしたり、雑誌を読んだり
・・・・でもでもでも
クラクションみたいな内線が鳴ると静まりかえる
誰が呼ばれるかで部屋の空気は
“シン…”
と音を立てずに鳴る
誰がどれだけ仕事をしたのか?逆もまた然りな世界…
いちいち“鬱病”生産工場みたいに壁面に棒グラフを貼り付けなくていい世界…
“ミサちゃんご指名です”
賑やかな話の中心だった“ミサちゃん”が
「は~い」と
軽い軽いフワリと浮いたピンポン玉みたいな返事をする
“シン…”
“シン…”
と、鳴り止まなくなった重い無音
友情ってカタチなんかないけれど
鈍痛みたいなココロの傷だけは、分かち合える
“せせこま狭い嬢の待機部屋”なのです
