テレフォン -約束-
第5章 原色の気球と花束と
今日は近未来系の地下鉄を小綺麗なプラットホームで待ってるアタシ
この日も蒸し暑い夏の夕方の出勤でした
《ごくごく普通の出勤でした》
そして“せせこま狭い嬢の部屋”で、ソファーに腰を掛けて冷えた
【甘い甘いミルクティー】を飲もうと思った瞬間に
「レナちゃん、ご指名が入りました」
《ごくごく普通のご指名でした》
客寄せ用のチャイニーズドレスのポラロイドのアタシを選んだのは
爽やかな笑顔をしたお客さん
《ごくごく普通のお客さんでした》
でも、それは、“由井さん”に導かれた運命の出会いの日なのでした
アタシは、この日が
過去の“約束”を思い出し
現在の“約束”に左右され
未来の“約束”に導かれる
起算点であって、中間点であるだなんて、知らずにいたのです
・・・・それくらい
なんてことない
背中に電流なんかも走らない
赤い糸なんて頭によぎりもしない
・・・・それくらい
本当に
・・・・それくらいに
《ごくごく普通に
ただ…
夏が残ってるだけの日でした》
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