
テレフォン -約束-
第5章 原色の気球と花束と
“女のコの一人暮らしはやっぱり、不用心なんだ…”
シゴト帰りの部屋の前、扉のカギを開けた瞬間に視界外から見知らぬ男が斜め後ろから、一緒に入ってこようとした
アタシは、あまりに突然のことで言葉を失い、驚愕したけれど
必死で足を踏ん張り
男の指に噛みつきました
生まれて初めて噛みついた感触は、大きな輪ゴムを噛んでいるみたいで気持ち悪くて…
何より、ざらついた男の指が舌に伝染した時に“死んでも入れちゃダメ”と骨を砕くほどに力を込めました
護身術など知らないアタシでしたが、運良く何とか、男を撃退することは成功しましたが、安らぎの住処は、心地悪く不用心な居場所となり
“同じ街ながら”ですが、お姉ちゃんと同居することにしたのです
ここは、大都市の中心部から、ほんの少しだけ離れていて、戦時中の空襲を免れたおかげで、ほんの少しだけ下町情緒を残している
アタシが産まれ育った街なのです
