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時計じかけのアンブレラ

第7章 晩夏

チャリティー番組の仕事がハケて、そのまま翔君の部屋へ二人で帰った。

昔ならいざ知らず、流石に今では事務所も休息の時間をくれる。
もうオイラ達もそんなに若くないし。

ドラマや映画、舞台でもそうだけど。
大きな仕事はいつも、受け取るには多過ぎる特別な何かを連れてくる。
ライブもそう。

誰かの情熱だったり、願いだったり、打ち破ろうとする勢いとか。
変えようとする想い。
ひたむきさ。
生命そのものが持つ、生きようとする力みたいなもの。

たくさんの、たくさんのエネルギーが降りて来て、満ちて。
溢れて。

届けろ、と俺達に命ずる。

きっと俺達がいろんなものを与えられて来たのは、自分たちのためじゃなく、見てくれる人に届けるためなんだろうな。

パイプみたいに、受け取って流していくんだ。

なんて。
わかんないけど(笑)。

なんだか体と心に残った熱がいつまでも消えなくて。

久しぶりにガッツリと抱き合って、一応二人とも眠ろうと目を閉じたんだけどね。
収まらないんだよね。

もう怠くて、疲れて、体は悲鳴を上げてるのに。
取りあえず一つ終わった、ってホッとして、だけど、くすぶって消えない。

だもんでオイラは、目を閉じた翔君のきれいな顔をぼんやり見ながら、らしくもなく小難しいことを考えてみたりして。

「あぁ…」

絵が、描きたいな…。

いま描くなら、どんなのがいいかな…。
どんなふうに、なるかな…。

思わず声になって出た音に、翔君が目を開けて。
ん?って、視線だけで訊いてきた。
いつもいつも、オイラはこの人の優しさに守られてる。

返事をするのがおっくうで、首だけ伸ばして鼻の頭にキスをした。
いいから翔君は寝な、って。
自分の鼻の頭を合わせてスリスリする。

体を洗い流そうと、ベッドを出ようとして腕を掴まれた。
翔君もゆっくりと起き上がる。

寝なよ、って言おうとしたらキスされて。
それが長くて深いから。
応えてるうちに、また、熱くなってきた。

「んっ、しょお……ん…っ…」

のけぞって受け入れていると体重を掛けられて、自分の体を支えていられない。

翔君も同じ?
消えない熱がまだくすぶってる?

「もう少し付き合って…」

耳元で囁かれた。
オイラは返事をする代わりに翔君の背中に腕を回す。

「あぁ…」

夏が、終わろうとしてる。








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