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時計じかけのアンブレラ

第10章 胡蝶の羽ばたき

「しょおくんは誰よりも俺の気持ち、わかってくれる
感謝しかないよ
オイラはこんなだし
言葉とか、言い方とか、伝えられなくて
いっつも、もどかしいけど…
しょおくんがフォローしてくれるから
まるで介護されてるみたいなの(笑)」

ああ、ホントに嬉しそうだ。
俺の話を、こんなに嬉しそうに。

うつし世は夢、夜の夢こそまこと。
そう言ったのは乱歩だったか。

後悔することばかりで、一人で逝かせてしまった貴方に、してやれることも思いつかず。
しっかり生き抜いて幸せになれ、って周りは言うけど、そんなの無理だって。
ただ漫然と息をしてた。

どちらが夢でも構わない。
俺にもまだ、出来ることがあるんだ。

「青江さんのしょおくん…
そっちでは休止しなかったって、
それからどうなったの…?」

俺は黙って首を振った。
智君は、俺を気遣うように、じっと静かに見つめてくる。

「それは知らない方が良いと思う
未来って、いろんな可能性があるじゃない?
沢山の選択肢の中から、選んだ結果が反映されてくるわけだけど
その選択肢って隣り合ってるようなもので、間違いは無いんだと思うよ

ああ、思い出した

前に宇宙に関する番組をやらせていただいた時、面白い話を聴いたんだ
一つの考え方であって、証拠は無いんだけどね

並行してる次元って全部で12、あるらしい
丁度ホースを束ねたみたいに、12の世界が隣接してて
それぞれに自分が存在出来るんだって

休止した世界、しなかった世界
だけじゃなくて
もしかしたら解散した世界もあっただろうし
メンバーの誰かが抜けたり
事故や事件が起きた世界も多分あるんだろうね

俺が聴いてて面白いなと思ったのは
その12の世界を人間は常に『自分で』行ったり来たりしてる、って言うんだ
自分の選択で、時間が移行する時に、次元も移動してるって

要するに、時間はとても柔らかいもので
未来は選べる、って話なんだけど…
ちょっと解りにくいね(笑)」

俺の話を聴きながら、次第に困った顔になっていく智君が可愛くて。
愛おしくて。

「何が言いたいかって言うと
間違ってないよ、ってこと(笑)
間違った、と思えば、間違った結果を確認する未来に辿り着く
真摯に向き合って出した答えなら、それに相応しい未来に向かう
だから大丈夫なんだよ
間違ってない」




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