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時計じかけのアンブレラ

第9章 サナギが見る夢

5×20のツアーが全て終了するまで、オイラはとにかく気を張ってたんだと思う。

一区切りをつけるにあたって、もしかしたら最後になるかもしれないステージ。
この景色を見届けなくては。

その気持ちだけが常に自分の心にあった。
それが俺の責任だから。

ここまで応援してくれたファンの子達。
スタッフさん、メンバー。
社長にも。

しっかり見てもらわないといけない。

大袈裟なことはあんまり好きじゃないけど、けじめを、きちんと形にして共有する。
今しか見られないこの景色を、見届ける。

そう思って過ごす日々は、長くもあり、短くもあり。

それから。
オリンピックが終わって、最後のステージ。
そして休止に入って。

全ての予定がなくなった途端にオイラは体調を崩した。

実際の所ギリギリで、少し前からちょっと無理はしてて。
それがまずかったのかな…。

最後の仕事が終わったと同時に熱が出て、歩けなくなって。
担ぎ込まれた病院にそのまま入院してしまった。

取りあえず家族を連れて旅行にでも行こうか、なんてぼんやり思ってたのにさ。
でもそんなことしたら、早速、日本脱出か、とかって。
また騒がれても周りに迷惑だから、どうしたもんかなぁ、なんて考えてたらこの有様。

やれやれ。
新年早々にこれだもの。

幸い大きな病気は見つからなかったけど、毎日夕方になると熱が出て。
原因が特定できないって。

一人だとどうしてもテキトーにしちゃうし、誰かにずっとついててもらうわけにもいかない(と言うか、それは嫌だし)。

とにかく安静に、ってことで、病院のベッドで24時間の点滴を受けながら。
オイラは毎日、昏々と眠り続けてた。

「きっとホッとしたんだね
疲れが出たんだよ」

翔君は見舞いに来てくれるたびにそう言ってた。

忙しいのにさ。

来てくれてもオイラ寝てばっかりいるから、会えないこともあったりして。
さっきまで櫻井さんがいらしてたんですよ、って看護師さんに言われると申し訳なくて。

でも、目が覚めた時に翔君が居ると嬉しいから、来なくていいよ、とは言えなかった。

眠って起きて、また眠って。
体に力が入らないなぁ、とは思うけど、熱がある以外は特別に痛いとか苦しいとかもなく。
とにかく眠くて。

なんだかんだ、入院してから半月が過ぎた頃。
突然青江さんがやって来た。




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