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「はっ？なに言って…」

誰に響いてて、何を否定？

「だから、翔がようやくわかってくれたのかなぁ、なんて期待したのに
違うって否定されたから残念」

「俺が何をわかったって？」

さっきまでの会話で俺が知り得た事ってなんだ？
智の好きな人が、意外と身近にいるって事と、智はそれなりに行動してるってことくらい

その程度の情報じゃ何も…

「ん？俺の好きな人が、翔だって事」

智が平然と言い放つ

「はっ⁈好き？智が俺を⁈」

「そう…本当は気がついてくれるの待とうと思ってた
その方が衝撃が少なくて済むだろうから
でも翔言ってたじゃん？
『好きって言ってくれなきゃわからない』って…
だから言うことにした
じゃないと永遠に気付いてもらえなそうだからな」

「ちょっ！ちょっと待って！理解不能！
智の好きな人が、なんで俺⁈」

「ん〜、『コイツ可愛いなぁ』から始まって、気付いた時には好きになってたなぁ…」

落ち着き払った智とは対照的に、半ばパニック状態の俺

だって男同士だよ⁈
それに今までそんな態度……なくはなかったか…

俺の世話をする智は献身的で、血の繋がった家族並みの愛情を注いでくれてた

これって、会社の同僚ではありえないレベル

俺だって、こんなに尽くしてくれるのは、母親くらいのもんだと思ってた

ってことは、智の想いは冗談じゃなく、本物って事だよな…

「翔？」

俺の名を呼ぶ智の顔は、少し心配そう

「ごめん、智」

「え？」

「智の気持ちは理解できた
でも…すぐには答えられないよ…」

「あぁ…なんだ、びっくりした…」

「え、なにが？」

「いきなり謝られたから、フラれたのかと思った…」

「ちっ、違うよっ。ちゃんと心が落ち着いてから考えたいと思ったからっ」

「うん。ありがとな、翔」

優しく微笑む智を見て、キュッと鳴った心臓

あぁ…なんだ、そっか…

智に愛情を注がれる女性はしあわせだろうな、と羨ましく思ったけど
羨ましがる必要なんてなかった

落ち着いて考えるまでもなかったや…

そのしあわせ者は俺なんだ