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あなたが私の最高な人

第1章 Act.1

 距離は人を不安にさせる。
 つまらないことで喧嘩をして、すれ違い、どちらからともなく別れを切り出した。

 しばらくは抜け殻のようだった。

 もう、恋なんて面倒なことはしたくない。
 そう強く思いながら毎日を過ごした。

 なのに、私は何をしているのだろう。
 友人に誘われるがままに参加した合コンだったのに、アルコールが入ったとたん、自分でも抑えられないほどテンションが上がっている。

 初対面の男達の、値踏みでもするようなギラギラした視線にも気付いていた。
 だから、最初は警戒していたはずなのだけど、お酒は私の中の理性を壊してゆく。

「ごめん、ちょっと外すわ」

 盛り上がっていたところで、私はゆっくりと立ち上がる。
 そして、フラフラとした足取りでお手洗いへと向かう。

「ふう……」

 私は洗面台の縁に手をかけ、鏡に映し出された自分と睨めっこした。

 目が据わっている。ちょっと酔っ払ってるな、と自覚があった。
 でも、まだまだ飲み足りない。もっと飲んで、飲みまくって、今までのことを全て忘れてしまおう。

 とはいえ、酔いが冷めたらまた、想い出してしまうかもしれない。
 それならそれで、また飲めばいいだけだ。

「私はまだまだいける!」

 誰もいない中で声を張り上げてから、お手洗いを出た。
 と、その時だった。

 目の前の風景がぐにゃりと歪んだ。
 立っていることもままならず、そのまま崩れるように床に座り込んでしまった。

 おかしい。
 酔っ払ってはいるけれど、ここまでお酒に弱くなかったはずなのに。

 こんな姿、誰にも見られたくない。
 そう思って立ち上がろうとしても、身体の自由が利かない。

 もう、このまま死んじゃうのかな、なんて考えていたら、ふわりと身体が浮き上がった。

 抱き上げられたことは分かった。けれど、相手の顔が分からない。
 まるで、そこだけ靄がかかったかのように。

 ――死神……

 不意に浮かんだ。

 死神は私を無言で運ぶ。
 このまま、死後の世界へ連れていかれてしまうのだろうか。
 そんなことを考えながら、私は瞼を閉じていった。

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