I・I・NA・RI
第3章 幼なじみ
「え…?」
〈青斗は近くにいた?〉
菜乃はまたドキドキしていた。
「俺、走っていくからさ、じゃ!」
青斗が階段を降りかけて
「何か困ってるなら言いなよ…?」
そう言って走って言ってしまった。
〈どういう意味…?〉
菜乃にはわからなかった。
いつもは部活の朝練で早くに家を出る青斗。
家からはバスには乗らず、運動の為に自転車で
駅に向かう。
朝練がない時や、学校の通学状況がにより
たまに電車が一緒になることがあったが
電車が混むこともあり一緒に通学することはなかった。
〈何か青斗は気付いたのかな…。〉
菜乃は考えながら学校まで歩いた。
もうすぐ校舎が見えてくる。
「菜乃、おはよー!」
同級生の凛花だ。
凛花は青斗に好意を持っている。
「ねぇ、さっき青斗君走ってたよ!」
凛花はとても嬉しそうだ。
「で、今度のダブルデートの件どうなった?」
凛花の目がキラキラと輝いている。
「あっ、まだ青斗に言ってないや!」
菜乃は凛花に青斗とのデートのお膳立てを頼まれて
いたのだった。
「もう、菜乃様ちゃんとお願いしますよ!」
凛花が菜乃を軽くつねってきた。
「ゴメン!ちゃんと言っとく。」