I・I・NA・RI
第3章 幼なじみ
電車での出来事もあり、すっかり忘れていた。
〈ダブルデートかぁ。〉
青斗に頼んだら誰を連れて来るのだろう。
仲の良い友達が大勢いるので想像がつかない。
菜乃は丈太郎に想いを寄せているのでただの付き添い
でしかないのだが。
二人は校門をくぐった。
〈ちゃんとしっかりしなきゃ!〉
菜乃はまだ敏感で違和感のある自分の体に意識を
傾けそうになるのをこらえた。
休み時間に青斗の所へ行かないと。
これから勉強するというのに知らない男にいいようにされ
友達にも痴漢相談出来ないような内容をまた思い返す。
〈ダメ!…ダメ…!〉
結局菜乃は一日分ぼんやりと過ごすことになった。
昼休みに丈太郎からのLINE。
「菜乃、いい子にしてるか?」
菜乃はドキッとした。
悪い子のつもりはないが正直に言える状況でもなかった。
当たり障りのない内容でLINEを返し、
結局青斗へ話に行くのも忘れてしまった。