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『潤は優しいね…』
『甘え方まで上手くなったのか？その男にでも、教えてもらったのか？』
『…』
『そろそろやめるか？この茶番も』
『茶番…？』

松本が向きを変える

目を見られる

『智はさ、俺の事好きでも何でもないだろ？』
『⁈』
『わからないと思ったか？知ってたさ、初めからな』
『…』
『俺が智の弟を狙ってるって聞いたんだろ？』
『えっ…』
『あれデマだからな』
『…嘘…⁈』
『…智の噂も聞いてたからな。智が俺に付き合ってほしいって言ってきたのが、狙い通りだった』

頭の中が混乱した

松本が話す内容が理解できない

全てわかってて、何で俺と付き合う必要がある？
俺に付き合ってほしいと言わせる為…？

『…誰にでも抱かれる男好きな奴かって…試したってわけか…？で、その通りになったって、裏じゃ笑ってたのか…？そういう事か…』


呆然とする頭の中で、答えに行き着いた
騙してたつもりが、騙されていた

何に対してだかわからない涙が、静かに落ちた

松本の背中から腕を離し、ベッドから降りる
床に落ちていた制服を拾い上げる

『どこに行く』

後ろから松本の声が呼び止める

『…茶番は…終わりなんだろ…？』
『…そうだな。茶番はもういらねぇな…』

松本が溜め息を吐く

『智…今度は本気で俺と付き合う気ないか？』
『………はぁ…？』

振り向くと、松本の真っ直ぐな目が見ていた

『……何言って…』
思考がついていけない

ゆっくりベッドから腰を上げ、歩み寄ってくる

『…抱きしめてもいいか…？』
『えっ…？』

返事をする間もなく、その力強い胸の中に抱きしめられた

『智、俺を好きになれよ』
『潤…』
『俺はずっとお前が好きだった』
『えっ…？』
『智が俺を好きじゃなくても付き合えれば、それでよかった。でも…今は智の気持ちが欲しい』
『俺の気持ち…』

抱きしめられる腕に力が入ったのがわかる
まるで、大事なものを自分の中に仕舞い込む様に
きつく固く、誰にも取られないように

『智…俺を好きになれよ…』

耳元で囁くような声にドキリとする
松本から、こんなに熱く切ない告白を受けるなんて、考えもしなかった
揺らめきそうになる心
体も心も流されてしまいたくなる

『潤…くん…、俺…』

突き離す事も受け入れる事もできない