テキストサイズ

若葉

第1章 文化祭

松本の首に手をまわす。
『潤君のハッピ姿、カッコいいね』
甘えた声で囁く。

腰にまわされていた手が、さらに引き寄せるように力が入る。
『だろ?智も浴衣、色っぽいな』
ニヤリと笑った。
浴衣の隙間から、胸元、首すじにかけて、香りを嗅ぐように顔をよせ、ゆっくりと唇をはわす。

松本の視線から、櫻井をそらすには十分だった。
後ろは見えないが、櫻井が静かに立ち去ったのがわかった。

自分は何されてもかまわないが、櫻井を危険にさらしたくなかった。

松本は危険な男だ。

恵まれたルックスと、俺様な性格からか一部の人間からは、男女問わず受けがいい。
そんな奴の罠にかかったのは…俺。
逃げ出す事は、初めから諦めていた。

俺には暴力は振るわなかったし、俺を手に入れた松本は、遊び相手を全て切った。
自惚れる気はないが、彼に特別な扱いを受けているのはわかる。
そんな俺に対し、まわりは口ではいろいろ言うが、手を出された事はなかった。

特別な扱いを受ける反面、松本の嫉妬心は強かった。
特に櫻井に対しては、面白く思っていなかった。

櫻井は静かな性格だ。
争い事を好まない。

だから巻き込みたくなかった。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ