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時間がない

第1章 時間がない

 私の中の時間が止まっていた。
 
 
「えっ、あ……私もなの」
 
 
 さっきは私のオデコにあったレインくんの手のひらが、今度は私の頭をナデナデしてくれた。髪がクシャクシャになっていく。
 
 
「いつもだよね。レインくん……」
 
 
「えっ……」
 
 
 頭を撫でるレインくんの手のひらが止まった。
 
 
「同い年なのに、レインくん、いつも子供扱い……」
 
 
 ちゅっ……。
 
 
 レインくんの固くて冷たい唇が私の唇に重なった。私は固まった。
 
 
「これでも?」
 
 
 また、レインくんの手のひらが私の頭を撫でる。
 
 
「ずるいよ。レインくん……。不意打ちでキスなんて……」
 
 
 溜まった涙のせいでレインくんが見えなくなった。
 
 
 んぐっ……。
 
 
 レインくんの唇に私の唇が覆われて、今度はねっとりとした舌で私の口の中を探り出す。身体が震えた。私もそれに答える。
 
 
「うるう、うるう、俺、お前が大好きなんだ」
 
 
「レイン……私も……」
 
 
 ブーン、ブーン。
 
 
 スマホのバイブが時間を知らせる。
 
 
「ゴメン、レインくん……本当に私には時間がないの」
 
 
「えっ……?」
 
 
「レインくん、ありがとうね。バイバイ」
 
 

 約束の時間よ。



 透きとおるような声が私にささやく。
 
 
 私の身体はすうっと浮かび上がった。
 
 


 せめて、彼が幸せでありますように……。


おわり
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