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君の光になる。

第5章 美容室

「会いたい。安倍さんに会いたい」
 
 夕子の記憶の中の安倍を思い描く。トニックシャンプーの匂い。彼の顔の形を……。
 
 自分の唇をそっとなぞる。彼の柔らかく優しい唇を思い出して……。
 
 窓から入る冷気を含んだ風が夕子の髪を揺らした。
 
 カサカサと言う音は、ススキというホウキのような雑草だと言う父の言葉を思い出した。ジーっという音の中にコロコロという虫の音が混じる。夕子は窓を閉めた。

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