
その瞳にうつりたくて…
第1章 過去と今
『蒼き地球を護るため…、俺達は戦う!!』
…そんなお決まりの台詞を並べ、主役を張っていたのはもう何年も前の話。
今の俺は、ここで何をしてるのか?
時々ふっとそんな事を思う。
「えー、演技の基本は心です。身ぶり手振り、視線の向け方まで、全てが揃って初めて臨場感が生まれるのです」
鏡張りのレッスン室。
数人の生徒が座り込み、俺を囲みながら俺の話を聞いている。
まぁ、真面目に聞いてる奴なんていないだろうけど。
「今日は"泣き"の演技です。泣くと一口に言っても表現は様々です」
ここはアーティスト養成学校。
俺はここで俳優指導の仕事をしている。
俳優だけじゃなく、クラスは違うがアーティストコースやダンスコースもあるマンモス学校。
18歳の時に俳優を目指して東京に上京。
上京したての頃は金もなく、いくつかのアルバイトを掛け持って食い繋ぐ日々。
数えきれない程のオーディションを受けるも、結果はいつも同じ。
落選、落選、そんな毎日。
「大声で泣き喚いたり、さめざめと泣いたり…」
だけど、そんな俺にもやっとチャンスが来た。
戦隊物のオーディションに受かったのだ。
しかも、主役のレッド役という大役だ。
俺の夢はここから始まるんだと胸を膨らませていたのに。
「それじゃあ、実際に何人かにやってもらおうか…」
辺りをキョロキョロと見渡しながら適当な人材を選ぶ。
