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その瞳にうつりたくて…

第1章 過去と今

しかし、辺りを見渡す俺の耳に入ってくるのは…

「ねぇねぇ、カトセンってさ、やる気なくない?」
「うん。いつものことだけど。もっとしっかり指導して欲しいよね」

数人の生徒のヒソヒソ声だ。

「カトセンって、昔は戦隊物の主役だったらしいよ?」
「あー、何とかレンジャーとか何とかレッドとかのやつ?知らないなぁ」


ここにいる生徒はほとんどが10代。
俺が戦隊物の主役をしてたのはもう20年も前。
この子達が知らなくて当然だ。
知ってるとすればこの子達の両親世代だろう。
でも、主役をしてわかったことがある。

戦隊物は次から次へと新しくなって行く。
今ならCG技術も格段に上がってるし、昔に比べてよりリアルな戦闘シーンも作れてしまえる。
それに、戦隊物に出てくる戦隊達もイケメンや美人ばかりになって行く。

そんな中で、誰も俺の存在なんて覚えてやしない。
多分この子達の両親も俺のことなんてとうに忘れてる。

誰の記憶にも残ってないだろうけど、俺が主役をしていたという話だけが1人歩きしているのだ。
一体どこからそんな話が漏れ出すのか。

生徒からしても、過去の主役より今の主役級の俳優に指導してもらいたいのだろう。
ここにいる生徒達は昔の俺そのものだ。

夢や希望に溢れてる生徒ばかり。

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