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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

だが、嬉しさの反面で罪悪感に襲われていた。


もし、彼女が俺の正体に気づいたらどうする?
初恋のレッドがこんなところで指導員をしてる知ったらどうする?
家庭も作らず、俳優への道を諦めて、それでも尚芝居にしがみつこうとしてる俺を知ったら、どう思うだろう。



知られたくない…。
こんな俺を知られて彼女にがっかりされたくない。
彼女の初恋を台無しにしたくない。

――――でも

「お兄さん、私のこと、ただの特撮マニアの変な子って思ってるでしょ?」
「え?あ、いや…」

彼女の話を聞き考え込んでしまったせいで、彼女の話に何の反応も示さなかった俺を怪しみ彼女が口を開いた。

「い、いや…、そんな事思ってないよ…」
「本当にー?」
「だ、大胆だなーとは思ったけど」
「だって…、しょうがないじゃん!ずっと憧れてたんですもん!」

彼女も顔を真っ赤にしながら話している。



彼女は目が悪い。
だから、俺がどこの誰かもわかっていない。

今まで出会って来た人間は、俺が昔主役を張ったとわかれば好き勝手に陰口を叩いていた。

でも、この子は俺の素性をまるで知らないんだ…。

「つーか、私の話ばっかりですね。お兄さんはここの生徒さん?指導員?」


俺は…、ずるいと思った。
彼女の前でなら、正体を隠して本当の自分を出せると思ってしまった。



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