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その瞳にうつりたくて…

第3章 再会

「あ、あのさ…」
「はい?」

彼女の視力では俺の顔はボヤけて見えてる。
俺の顔をハッキリと認識していない。
もし、俺がここでレッドだと名乗ったら…。

「もし、今目の前に…、レッドがいたらどうする?」

胸を高鳴らせながらそんな質問をした。
だけど、こんな質問をしても自分で自分の首を締めるだけだ。

「今の私の視力じゃ見えないですよ~」
「いや、ほら…、見えたとしてだよ?」
「見えたとして?そうだなー…」

ニコニコと楽しそうな表情でその場面を思い浮かべている。
その嬉しそうな表情を見てるだけで、何と無く反応がわかってしまう。



「目の前に加藤 悠人さんがいたら…」




――――ドキッ!

いきなり本名を言われてまたもや胸がズキッと痛んだ。
彼女の柔らかな声が俺の名前を呼んだ。
レッドを演じていた俺の本名…。


「加藤悠人さんに"大好きです!"って伝えます」






―――――。

夏の終わり、もう涼しさすら感じる屋内で
俺は目眩にも似た感覚に襲われた。
クラッと、一瞬目の前が明るくなったように感じた。

俺がレッドだと、加藤悠人と気づいていない。
気づいていないからこんな大胆な事が言えるのか?
つーか、自分で聞いといてすっげぇ恥ずかしい…。
顔、すっげぇ熱い…。

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