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その瞳にうつりたくて…

第6章 友達



会ってはいけない。
これ以上、彼女に会ってはいけないと思いながら、自分の中の衝動に抗えなかった。

「え?ハルさんって40なの?もっと若いと思ってました!」
「そう?どの辺が?俺のこと見えてないでしょ?」
「声の感じとか、前に抱きついたときの胸板の感じとか」
「へぇー。そう?」

それから俺は休憩時間の度に彼女に会いに来ている。
30分だけの短い時間。
この音楽室で彼女といろんな話をした。

バレたらクビだとか、バレたら彼女を悲しませるとか、会ってはいけない理由はたくさんあるのに。

「体鍛えてるんですか?」
「まぁ、体動かすのは好きだから」

俺の中にこんな衝動があるなんて知らなかった。
それは彼女の目が悪いからか?
俺がこんな大胆な行動を取れるのは、彼女が俺のことを知らないからだ。
彼女はいつもピアノの椅子に座り、俺はパイプ椅子に座っていろんな話をする。

「私はハルさんの姿は見えないですけど、年齢より若く見られるでしょ?」
「どうかな~」

昔から体を動かすのは好きだし、今でも週に何回かはジムに行って体は鍛えてる。
でも、若く見られたことなんてあったかな。

「それに、モテるでしょ?」
「いや、それはないなぁ~」

戦隊物に出演してた時はファンレターを貰ったことはあるが、それはあの時だけの話。
戦隊物が終わってからはファンレターもなくなったし、生憎女性とは縁がない。

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