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その瞳にうつりたくて…

第6章 友達

「これで生徒達の一生が決まると思うと気が重いですよね」
「あははっ」

意外だな、平井先生でもそんなことを思うなんて。
平井先生は生徒を一人一人ちゃんと見てて、成績表にも気を配ってると思ってたが
平井先生でも気が重くなるのか…。

「たまに思いません?私達は生徒を評価していい立場の人間なのかどうか…」
「平井先生はしっかりされてるから、いいんじゃないですか?」

平井先生は実力も実績もある。
平井先生に指導されたがっている生徒はたくさんいる。
それを言うなら俺の方が怪しいものだ。
実力も実績もない。
俺は生徒を評価していい立場の人間なのかどうか時々不安になってしまう。

「そんな事ないですよ。私生活ももうボロボロだし」
「は?」

私生活?
お子さんはいないにしても、平井先生には旦那さんがいたはず。
毎日残業で忙しいみたいだが、家に帰れば温かい家庭があるはず。
何もボロボロじゃない。
寧ろ羨ましいぐらいだ。

「あ、いえ…、個人的な事ですから」

軽く笑った平井先生は俺に軽く会釈をしてお疲れ様と言い残し先に帰って行った。

何だったんだ、平井先生のあの態度。
いつもの平井先生と何か違うように感じたんだが、俺の気のせいか…。

俺も早々に生徒達の採点を済ませて帰路に着いた。
あんまり考え込んでたら頭が爆発しそうになる。

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