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その瞳にうつりたくて…

第6章 友達

「ちょ、カトセンが言い返したよ。珍しい」
「マジビビッた。急に覚醒とか?」

レッスンに遅刻したり、生徒に八つ当たりしたり、こんなんじゃ指導員失格だ。
もっとしっかりしねぇと。
レッスン中は極力、彼女の事を考えないようにしよう。
彼女の事を考えると…、心が乱れる。


「でも、ちょっとかっこよかったね」
「う、うん…」


彼女の笑顔も、雷に怯える顔も、泣き顔も
彼女の全部に気持ちが乱される。
自分でもわからないうちに乱れて行く。


今日もレッスンが終わり生徒達は次々に帰って行く。

「お疲れ様~」
「お疲れっした~」
「お疲れ~。気をつけてなー」

俺は最後までレッスン室に残り生徒達の成績表に点数をつけていた。

誰々は泣きの演技が上手い、とか
誰々は笑いの演技が上手い、とか
各々に成績をつけ、上司に報告してその上でいろんなオーディションを受けさせる。
自分が育てた卵達が巣立ちその姿をテレビで見れたら最高だ。
生徒達のこれからの人生に関わる採点だから責任も重大だ。

机に向かい生徒達を採点していると

「あー、加藤先生、お疲れ様です」
「あぁ、平井先生」

ドアの隙間から顔を覗かせたのは平井先生だ。
先生のクラスもレッスンが終わったところなのだろう。

「生徒の採点中ですか?」
「えぇ、まぁ」

レッスン室に入ってきた平井先生は俺の手元にある成績表に目を向けた。


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