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その瞳にうつりたくて…

第7章 悪戯

ふっと手元を見ると、さっき小野から貰ったクッキーが。
俺が歩く度に手の中でクッキーとラッピングの袋がカサカサと音を立てていたのだを
あ、ついこのまま持って来てしまった。
こんな微かな音に気づくなんて、さすが彼女の聴覚は凄いな。

「あ、さっき生徒からクッキー貰ったんだ」
「え…?クッキーを?」
「うん。毒入りかもな」

あははと笑うと、彼女は俺の手元をじっと見つめ出した。
どうやら俺の手元にあるプレゼントのクッキーを見つめているようだ。

じっと目を凝らしながら見るものだから俺は不思議に思っていると…

「リボン、付いてますか?」
「あぁ、何かピンクのリボンが付いてるけど?」

女性が考えそうな可愛らしいラッピングだ。
毒入りというのは冗談としても、日頃の感謝の気持ちってやつか?
まぁ、毒入りというのも強ち間違いではなさそうに思うが。

すると、彼女は重く口を開いた。

「その子、ハルさんの事が好きなんじゃないですか…?」
「はぁ?」

何言い出してんだ、綾ちゃんは。
小野が俺を好き?
んな訳ないじゃん。

「あはは~、それはないな~」
「何でそう言い切れるんですか?」

何で言い切れるかって?
そんなもん、普通に考えればわかるさ。
俺は生徒から陰口を叩かれるほどのつまらない講師だ。
男前でもなければ、惚れられる要素はひとつもない。

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