テキストサイズ

その瞳にうつりたくて…

第7章 悪戯

俺は小野から貰ったクッキーを片手に音楽室へ急いで走った。
雷が酷くなる前に彼女に会いに行ってあげないと。
今頃酷く怯えてるかも知れない。
泣いてないだろうか?

外の豪雨に気を配りながら俺は音楽室へ急いだ。







―――――ガラッ。


音楽室のドアを勢いよく開けた。
前もこんな事があったな。
ある雨の日、彼女は来てないんじゃないかと半信半疑でこの教室のドアを開けた覚えがある。

あの時と同じ、今日みたいな豪雨の日だった。

「あ、綾ちゃん…」
「ハルさん…?」

彼女は椅子に座り、蓋を閉じたピアノに顔を伏せた彼女がいた。
俺が入って来たと同時に顔をあげたが、その顔は恐怖に怯えてるのがわかった。

「大丈夫…?」
「あ、ごめんなさい…」

彼女に近づくと、その瞳には涙が滲んでいる。
やっぱり雷に怯えてたのか…。
ごめんなさいなんて謝る必要はないのに。

やっぱり、今日もこの教室にいたんだ。
こんな大雨だというのに、この教室で一人で怯えてたんだ。

「また雷に怯えてたの?」
「すいません、また泣いちゃって…」

彼女の色素が薄い瞳。
色でいうならヘーゼルに近い色。
不謹慎だが涙が滲む彼女の瞳は、まるで宝石みたいに綺麗。
彼女のそばへ近づくと

「ハルさん、何持ってるんですか?」
「え?」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ