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「しかし、おめえさん目に芯があって無愛想だが、それも味のうち……」
　
　と、男は私の背に腕を回して引き寄せた。
　
　ふん、余計なお世話だわ。

　やがて、股引の紐がすべて解かれ、それが腿に引き降ろされる。はらりと腰巻が開けた。肌けた臀に生温い風が撫でる。

「ああ、恥ずかしい」
　
　忍者が自分の身をもって自分の身を守ることなど当然だ。
　
　男が私の膝を左右に開いて覗き込む。
　
「ああ、濡れた赤貝がパックリといい眺めだよ。歌麿《うたまろ》の画《え》より匂い立つようで、艶っぽいよ」と、男がため息混じりに囁く。
　
「ふふっ、だけど私、気持ちいいと……」
　
　私は、自分の腿を合わせた。
　
　再び手のひらで男の塊を包み込む。と、テラテラと汗ばむそれはまるで生きている龍のようだ。そこから、恐ろしいくらいの強い脈動を感じた。
　
「えっ……ああ……そんなに気持ちいいのか。おめえも……」
　
「は、はい……。気持ちようございます」

　ふん、誰が。
　
「この助平な奴め」
　
　熱い男の塊が私の手の中で最高に高調したようだった。

　あと一回、ビクっとなったら、と心の中で身構える。
　
「あ、ああ、堪らねえ。ううっ……」
　
　と言い終えるや否や男の身体がまな板の上の魚のようにビクビクと跳ねた。男の塊が小夜の手のひらの中でビクビクと跳ねた。

　今だ。と、私は自分の手のひらに力を込めた。フラフラと揺れる男の小さな袋を。それはまるでクルミでも握り潰すかのようだった。
　
「ひっ、ぎゃあ！　て、てめえ、なにするんでェ。ウグッ！」
　
　男の喉元を押し上げる。と、大きな身体が飛んだ。
　
　私は、ヒラリと松の枝に飛び移った。カサっと松の葉が揺れる。
　
「チッ、この猿っ、舐めやがって！　降りて来い本当に叩っ斬ってやるわ」
　
　辛そうに腰をかがめ、頬を高潮させた男が松の下で左側の腰に手をかけ刀を抜く素振りをしてみせた。