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ダブル不倫

第2章 プロローグ

 はあ、と里井が大きなため息をつく。
 
「俺、ダメなんだよ。ガンバれば頑張るほど……空回りすんの……俺、若《わけ》えころは一番だったんだよ?」
 
 奈々葉は里井の肩を抱きよせた。
 
 彼の頬に頬をよせる。少し伸びた白髪の混じるアゴ髭が奈々葉の頬に当たる。
 
「部長……?」
 
「ん……?」
 
「なら、頑張らなければいいじゃないですか? ――ね?」
 
 奈々葉が彼の耳元で囁いた。
 
「宮崎……? おめえさあ……」
 
 菜々葉は里井の目を見た。
 
「宮崎、おめえって、見た目よりポチャポチャしてんのな?」
 
 ――えっ?!
 
「えっ、部長! 私……。ああ、台無し……」
 
――せっかくキュンキュンしてたのに……。
 
「……むにゃむにゃ……」
 
 里井の寝息が聞こえてきた。
 
「もおっ、知りません!」
 
 奈々葉は里井をベッドに寝かせ、彼のメガネを外した。
 
 ――ふふふ、小さな子どもみたい。
 
 チュッ……。
 
 少しやつれた彼の頬に唇を寄せた。
 
 チュッ……。
 
 ――ああ、私……。

 今度は唇を重ねる。薄く固い里井の唇に……。
 
 奈々葉は里井のリビングルームを片付けて帰った。

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