テキストサイズ

ダブル不倫

第2章 プロローグ

 奈々葉は足の踏み場もない廊下を奥に入り、右手にあるベッドルームのスイッチを点ける。
 
 ――部長……。
 
 その部屋は他の部屋と違い、きれいに片付けられていた。「きれいに」と言うか、この部屋だけは生活感が感じられなかった。
 
 ダブルのベッドに腰掛けさせ、コートとスーツを脱がせハンガーに掛ける。
 
「さ、宮崎……俺さあ……」
 
 里井は首が落ちそうなぐらいに項垂れ、ポツリポツリと語りだした。今朝の同僚の姿を思い出す。
 
「ハイ……」
 
 奈々葉は里井の顔を見た。
 
 眼鏡の奥の無表情な目に光るものが見える。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ