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ダブル不倫

第16章 夢の中から

 午後十時ごろ、奈々葉と里井は、○☓情報サービスの近くの駅のプラットフォームのベンチにいた。時間のせいか、千鳥足の酔客が多い。圧迫された空気がドンと音を立てたあと、銀色の筋を引いた列車が通り過ぎた。どこかで、『バンザイ、バンザイ』をという声が響いている。生温い風が二人の髪を揺らした。
 
「雨……、降るかなあ。俺、傘ねえよ」
 
 と、里井が呟く。
 
 奈々葉はベンチの端で丸めた背を里井に向ける。
 
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「とりあえずさ、少し落ち着くまで俺ん家に……ホイ……」
 
 プシュ……。
 
 奈々葉は里井からブラックの缶コーヒーを受け取った。
 
「……」

「全部飲めないんなら、無理しなくてもいいからさあ。温もるから、身体……」
 
 奈々葉は両手で缶を包み込んだ。

 ――温かい……。
 
 しばらく眺めたあと唇の先でそれをすすった。
 
 ズズ……。
 
 奈々葉は「おいしい……」と言ったあと、「いいですか。私、ホントに部長のお宅におじゃましても……」と里井に訪ねた。
 
 :
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 奈々葉はタクシーで里井のマンションに向かった。
 

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