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ダブル不倫

第16章 夢の中から

 高速道路を走るタクシーの中から見る夜景は滲んでいた。それは、雨のせいではなく、奈々葉の目から止めどなく溢れる涙のせいだ。奈々葉は額を膝につけて、声にならない声を出して泣いた。背に里井の大きな手のひらが滑る。
 
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「ホイ、どうぞ……。あんまりキレイじゃねえけど」
 
 里井の手のひらが奈々葉の背をそっと押す。初めに里井と唇を合わせたその場所は、綺麗に整頓されていた。
 
「……部長……?」
 
「宮崎、今日は疲れてんだろ。……だから、もう寝ろ。……な?」と里井が言ったあと、「これ……えっと、俺の……いや、女物のパジャマ……だけど、まだ新品だから……」
 
 里井は寝室のドアを開け、まだ折り目が付いている薄い水色のパジャマを受け取った。奈々葉は洗面所でそれに着替えた。
 
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 奈々葉が手足を伸ばして眠るのは久しぶりのような感じがした。
 
 柔らかいダブルのベッドの中で、奈々葉は深い眠りに落ちた。

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