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ダブル不倫

第4章 アノ日の翌日

 図星だった。ティッシュに一滴垂らした石鹸の香りのコロンをスーツの内ポケットに忍ばせていた。昨夜のベッドに眠る夫の横での行為を誰かに悟られるような気がして……。
 
 子犬のような美希の目が奈々葉を探るように見る。
 
「……えっ、分かる?」
 
 奈々葉は自分の襟を立てて、鼻を鳴らした。
 
「へえ、何かあった?」
 
 子犬のような目が更に奈々葉に近づく。
 
 コロンは成人式に誰かからプレゼントされた物だった。
 
「いや……何も……うん……ないよ……何も……」
 
「ふーん……」
 
 まだ、美希の目が奈々葉を疑っているように見えた。
 
 ふう……。
 
 ――さすがに鋭いなあ。美希って……。でも……。
 
 奈々葉は鼻を自分の脇に近づけて、クンクンと鼻を鳴らした。

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