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ダブル不倫

第4章 アノ日の翌日

 唇に里井のざらついた唇の感触が残っていた。

 誰かに「コラ!」と言われ、同時にパチンという手のひらを叩く音が奈々葉の耳元で弾けた。
 
「な、何よ?」
 
 目の前で美希の子犬のような目が覗き込んでいた。
 
「奈々葉……」
 
 美希が自分の腕時計を指差す。時計の針は十二時を指していた。
 
 ――もう、お昼だ。
 
「どうしたの? 奈々葉、恋する乙女みたいな顔してる」
 
「恋する……何それ?」
 
 ――やっぱ、美希は鋭い……。
 
「ボンヤリ自分の顔見てたり、って思えば、ニッコリ笑ったり、今だって……」
 
「今も?」
 
「奈々葉、目、ウルウルしてるし……」

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