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ダブル不倫

第7章 発熱

 菜々葉は目が冴えていた。昼間にあった里井との出来事が頭をよぎる。
 
 ――飲みすぎたかも、コーヒー……。
 
 しかし、里井と同じカップで飲んだコーヒーの味など覚えていなかった。
 
 ――きゃああ……。
 
 寝息を立てる信也の横で、奈々葉は自分のマクラを抱き締めた。中学生がどこかの部のキャプテンに憧れる、という心境だ。そんな心境の自分にも胸がときめいた。髪に里井の大きな手のひらの感触が残っている。なぜか涙が溢れた。抱いていたマクラに顔を伏せる。
 
 ラインのメッセージを知らせる通知音が軽やかに鳴った。

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