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ダブル不倫

第7章 発熱

 午後三時。インターホンのチャイムが鳴った。解熱剤が効いたせいか、身体が少し軽かった。
 
 奈々葉は大きく深呼吸してインターホンの受話器を取る。小さい液晶がボンヤリと画像を映し出した。スーツ姿で、真面目そうなメガネの男。里井だ。
 
 ふう、と菜々葉は大きく深呼吸してからインターホンに答えた。
 
「はい……」
 
「あのう……私、○☓情報サービスの里井と申します……」
 
 いつもの里井の声に比べて、更に落ち着いた低い声だ。
 
「あ、はい、今、開けます……」
 
 奈々葉は玄関の鍵を開けた。
 
「どうも……で、坂村に聞いたんだけどさ、宮崎、お前、大丈夫か?」
 
 無表情な目が奈々葉を真っ直ぐに見る。里井の顔が目のアップになった。
「えっ……ぶ、部長? 私のカゼ……」
 
 奈々葉は子猫のように首をすくめる。
 
 冷たい手のひらに前髪が上げられた。
 
「どれ……」
 
「えっと……伝染っちゃいま……あっ……」
 
 里井の額が奈々葉の額に触れる。冷たい額――。
 
 ――きゃあ、部長と……。
 
 耳たぶに熱を帯びる。
 
 ドクン、ドクンと自分の心臓の音が聞こえる。
 
「……うん、熱、まだちょっとあるなあ。無理すんなよ」
 
「あ……ハイ……」
 

 
 その夜、奈々葉は三十八度の熱を出した。

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