テキストサイズ

ダブル不倫

第8章 一時間早く

 久しぶりに自分のデスクに座った。誰が片付けたのか、いつもは雑然としたその上が整頓されていた。
 
 コトンと何かを置く音を置く低い音が広い部屋に短く響いた。
 
 ――えっ……?
 
 香ばしいコーヒーの香りが菜々葉の鼻腔に広がった。
 
「うーっす……」
 
 白いタオルを首に掛けた里井の姿があった。
 
「部長……」
 
「もう、こんな時間に開いてるんだ、ウチの会社……。そういやあ、こんな時間に出てくるなんて、新人の時以来だべ」
 
「……ですね? 私も知らなかった」
 
 奈々葉はコーヒーカップを手にとって一口啜った。
 
「コーヒーはリラックス効果ってのがあるんだと」
 
 コーヒーの香りと苦みが奈々葉の口に広がった。
 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ