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ダブル不倫

第9章 タオルハンカチ

 バスルームで菜々葉は、自分の身体を探ってゆく。熱いシャワーを頭から浴びながら……。
 
 右の手が胸の柔らかさを確かめる。吸い付くようなその感触を楽しむ。
 
 その逆の手の中指と薬指が奈々葉のしっとりと滑らかな部分を滑る。指の先にハチミツのように粘りが集まる。
 
 ――ああ……。んん……。
 
 艶めかしい声を漏らしそうになって唇を結んだ。
 
 中指の先がプルンとした肉の芽を捉える。痛いような気持ちいいような感じが背筋を駆ける。
 
 今朝の里井との出来事が奈々葉の脳裏で再生された。
 
 ――ああ、部長、部長……。
 
 奈々葉の指に里井が降りてくるような気がした。
 
 奈々葉は身体をくの字に曲げて、自分のぬかるみの中心に突き立てる。里井の指に変わった自分の指先を……。奥に……。更に奥に入ると、ウネウネと動いて熱くねっとりとしたモノが指にまとわり付く。
 
 眩しい光が奈々葉の目の奥でフラッシュした。
 
「ぶ、部長、部長んん、ああ……んん。クゥ……イク……イク……」 
 
 心臓がパンクしそうだった。底のない場所に落ちてゆく夢を見た後のように……。
 
 グチョプチュという淫猥な音と、奈々葉の艶めかしい声がシャワーの飛沫に溶ける。
 
 奈々葉は膝から力が落ち、膝から崩れ落ちた。


 
「ふう……」
 
 奈々葉は重い身体をベッドに投げ出した。夫の信也が寝息を立てる横で彼に背を向ける。
 
 タオルハンカチが見えた。美希から借りた物だ。それがベッドの脇に無造作に投げ捨てるように置いた自分のバッグから覗いていた。
 
 ――ああ、私は……。
 
 罪悪感に襲われる。
 
 タオルハンカチに着いた赤い色は、奈々葉が今朝つけて口紅だ。
 
「あ、美希のハンカチ……洗濯して返さなきゃ……」

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