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ダブル不倫

第10章 事件

「ああ……もう、ダメかも知んないなあ……」
 
 運転席の里井が弱々しく呟いた。
 
 奈々葉は里井を見た。
 
 「クソっ」里井の手がハンドルを殴り、カーステレオのボリュームを上げた。
 
 カーレースでよく聞くアップテンポのシンセサイザーの音が車内に流れる。
 
 ――助けてあげたい。
 
「部長……」
 
 信号待ちの車の中で、奈々葉は里井の首筋に口づけすると、里井の身体がピクリと反応する。
 
「み、宮崎、お前……」
 
「大丈夫です……今日は取れないコスメなので……」
 
 唇を里井に重ねた。
 
 奈々葉は里井の左手を取る。ハンドルを持つ手が離れる。大きいがスラリと長く繊細な指だ。菜々葉は彼のピアニストのような指を口に含んだ。
 
「ああ……宮崎……」
 
 喉奥が刺激され、溢れた唾液が里井の指に絡まる。

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