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ダブル不倫

第10章 事件

 奈々葉はひとつ軽く咳払いをして玄関の鍵を回す。脳裏のアップテンポの曲が止んだ。
 
 玄関を開ける。
 
 何かが違っていた。
 
 普段とは違う何かが……。
 
 寝室を開けるのが怖かった。里井との行為に後ろめたさもあるのかも知れない、と感じた。
 
「お帰り……朝ごはん、作ったけど、先にシャワーにするかな?」
 
 信也の笑顔には曇りがなかった。心の奥で胸を撫で下ろす。
 
「ありがと……じゃあ、ご飯にする」
 
 ――信也さんは私を疑ってないの? いや……疑ってるかも……。何で香水をつけ始めたの……とか……。浮気……。不倫……。ダメだ……私……。

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