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ダブル不倫

第15章 不思議な女性

「たっ!」

 左の足の裏に痛みが走った。生温かい何かがそこを濡らすのが分かった。

 いつの間にか陽が落ちていた。

「あ……」

 ――私……靴、履いてない。

 自分の足元に目をやる。

 ドロリとした鮮血が奈々葉の素足の足裏の形にプリントされている。

 ――どうしよう……。

 辺りが滲んでよく見えない。高速道路の高架下にある公園の植え込みにしゃがみ込む。寒くもないのにガチガチと身体が震えた。

「お姉ちゃん……大丈夫? お巡りさん……?」と通りかかった丸眼鏡の老婦人が奈々葉に声を掛けながら歩み寄る。

「……いえ……、私……大丈夫です。ありがとう」

「そう……じゃあ、お気をつけて。お姉ちゃん……」

 婦人の柔らかい手が奈々葉の手を握り、背をポンポンと優しく叩いた。

「…………はい…………ありが……とう……ござい……ます」
 
 と、言おうとするが、頬を滑り落ちた奈々葉の涙が自分の手の甲を濡らすのが分かる。

「まあまあ……はい、はい……何があったのか分からないけど、泣けば泣けばいいのよ……風船でも空気、入れ続けると割れちゃうじゃない? パンって……」

 と、婦人の手のひらが奈々葉の背を擦る。

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