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*。・。*1ページだけのストーリー集*。・。*

第2章 総長、コクられる



「そうちょうのおにいちゃん。ユメをいじめっ子から たすけてくれて ありがとう! これあげるー」

 通園服を着たガキが、小さな手で封筒を渡してきた。

 見た目が厳(いか)つい俺に対し、怖がりもせずにキラキラと目を輝かせてくる。『総長』って意味もわかってねぇだろうな、コイツは。

「おい、なんだそれは」

「ラブレター」

「あぁ!?」

「ユメね、そうちょうのおにいちゃん、すきなのー」

 マジかよ。誰もが恐れる俺が、ガキからコクられるなんざ……総長の名に恥じるぞ。

「俺に惚れるのはやめろ。怪我すっぞ」

「けが、しないもん。たすけてくれたもん」

「そうじゃねぇって」

 まいったな。気まぐれで助けただけなのによ。

「ねーねー」

「んだよ」

「ユメがおおきくなったら、およめさんにしてね」

「あぁっ!?」

 マジで、天使すぎてズキューンしたぞっ!

 しっかりしろ、俺! 今まで悪いことは散々してきたが、幼児にまで手を出すほど落ちぶれちゃいねぇ!

 とりあえず素直に応じておけば、ガキはそれで満足するだろ。

「わかった。嫁にしてやるよ」

「やったぁ! ぜったい、ゆびきりげんまんだからね!」

 無邪気だな。どうせすぐ忘れるクセに。


 *。・+・。◯◯年後。・+・。*


「ねーねーパパー」

 5歳の愛娘が寄ってきた。

「んだよ」

「マイね、パパすきなのー。おおきくなったら、およめさんにしてね」

「あぁ!?」

 マジで、天使すぎてズキューンしたぞっ!

「パパったら、また告白されてるー」

 俺の嫁が笑いながら来た。

「ママもね、マイの歳の頃に17歳だったパパに告白したんだよ。ねー、『そうちょうのおにいちゃん』?」

「もうその呼び方やめろ、『ユメ』」

「パパ、そうちょーそうちょー」

 ほら。マイまで真似するし。

 それに今は『暴走族』の『総長』じゃなくて――
『三人家族』の主で、企業の部署に所属する『所長』だぞ。

 あれからユメはハタチを過ぎてから、再び俺の前に現れた。だが俺は、あの時の幼児とは気づかず、迂闊に一目惚れをしてしまったんだ。コイツ、キレイに化けて出てきやがって。

「ユメは夢叶って嫁になりました。なんてね」

「全然ウケねぇ」

「もう、冷たーい」

 たくっ。このバカ一途のせいで、今は幸せだ。

〈完〉

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