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第1章 おかえり





あんな顔を見せられて黙って帰せるはずがない。




「蘆笙…痛い」




そういう簓を他所にこう言った。



「ええから、」

「…え、?」

「お前が、あいつの事想ってるままでもええ」

「蘆笙…」

「あん時お前と別れること選んだんは
俺や、でも…俺はお前が隣におらなあかんねん」

「……」

「お前じゃないと、あかんねや…だから」

「……」

「傍におってくれ…簓」



これは、俺の本心や。
簓が他の奴のもんになるくらいなら、
他の奴を好きなままでもいいから
俺の手の届く場所におって欲しい。



「蘆笙…っ、おまえっ、ほんま、アホや…
お人好し過ぎるで……ッ」



簓は俺の胸ぐらにしがみつき、泣き崩れた。



「違うわアホ…お前やからや」

「…こんな俺でもまだ好きや言うん?」

「…そうや、さっきも言うたやろ、お前がおらな嫌や」

「左馬刻とお前を重ねとっても…?」

「うん」

「いつお前に戻れるか分からへんのに…?」

「うん、ずっと待ってる」

「お前を傷つけることになるっ.....」

「うん、それでも俺が傍にいて欲しい言うたんや」

「ほんまにッ、お前だけは俺を想ってくれる…?」

「うん、今までもずっと想ってたよ」

「ろしょ…ッごめんッ…ほんまっ……ごめっ」




質問を重ねながら嗚咽を漏らす簓は、
まるで子供で、それをあやす様に背中を擦る。


今まで俺は、ずっと簓に助けられてた。
あの時から何かコイツにしてやれることを考えながら
今まで何もしてやれへんかった。


でも今、俺にしてやれる事が一つ出来た。

簓は、俺と碧棺左馬刻のせいで酷く傷つき
奴の面影を俺に重ねている。

それなら、奴の代わりになる。
それが簓に俺が唯一してやれる事。





















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