
妖艶乱
第3章 選ばれし女
「なんですか繭子殿…」
珠子はくすりと笑った。
繭子は息を整えてから言った。
「今から上様が
いらっしゃるようです!」
珠子と巴は繭子を凝視した。
「それは本当ですか?」
「今日の通用口の女中が
知らせに来ました」
通用口の女中とは
1日一度だけ殿以外の者、
といっても女中だけだが、
この屋敷に紅の扉の横にある
細く狭い通用口を使って
女たちの世話のために
入ってくることである。
「では今すぐ支度をせねば!」
珠子と巴は慌ただしく
動き始めた。
すると女中が一人入ってきた。
「珠子様、巴様、繭子様、
清子様が紅梅の間に
お集まりください、と」
「紅梅の間ということは
もう上様がいらっしゃるのか?!」
紅梅の間が
殿が女を選ぶ場所である。
珠子、巴、繭子は
急いで紅梅の間へ向かった。
