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堅実メイドの献身

第1章 真夜中の情事


スタスタスタスタスタタタッ

競歩大会にでも参加するのですか?
と聞かれれば、「えぇ、まさに今練習の真っ最中です。」と言わんばかりの早足で歩いている女がいる。

名を伊東雅(いとうみやび)という。

先程まで、暎人と情事を共にしていた女である。

雅は白黒のメイド服を着ている。
長い髪は纏めずにそのまま降ろしてあり、少し乱れている。



ーありえない、ありえない、ありえないっ!

心の中で、何度も叫ぶ。

少し眉間に皺が寄っている。

ーあぁ、早く自分の部屋にもどりたい

広々としていて、洗礼された内装も、今は部屋にたどり着くまでのただ長い回廊だ。

その回廊をできる限りの気力を振り絞って早歩きする。

やっと部屋に帰ると、直ぐに服を脱いだ。

ーとにかくシャワーっ!

メイド服を脱ぎ捨て、下着や靴下も起用に片足ずつぴょんぴょん跳ねながら脱ぎ去り、浴室に入ると蛇口を思いっきり捻った。

ザザーッ

真夜中の無音空間に水音がノイズのように響く。しばらく微動だにせずそれに打たれる。ノイズに耳を傾けるとなんだか無心になるようで、心が落ち着いてくる。

ーあ〜滝修行ってこんな感じ?滝に打たれて、煩悩を振り払う的な?

熱い湯が身体を伝うのを感じながら、本当に滝修行している方からはお叱りを受けうであろうことをふと思う。
やはり、どこか冷静ではないのかもしれない。

身体が温まると、浴室から出て寝間着に着替えた。

頭から被ったタオルの合間から、濡れた髪か覗く。

「疲れた、、、」

ベッドの側にある、椅子に倒れこんだ。
直ぐ側には丸いテーブルもあり、どちらもそれなりに良い作りのものであると伺える。

月の光が窓から差し込んでいる。
少し青みがかった柔らかな光がちょうど雅を照らす。

ー何故、このようなことに、、、

事の発端は二週間前に遡る。

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