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私、普通の恋愛は無理なんです。

第5章 筋肉痛の朝

 右斜め前のデスクの奈々葉はもう自分の席にいた。超ナチュラルメイクの彼女の頬はほんのりと赤みがかったピンク色で、ぱっちりとした瞳は少し潤んでいるように見えた。

「おはよう。奈々葉」

 香水を振っているのか、珍しく奈々葉の方から少し甘い香りがしている。

 いい香りだ。

「あ、みきちゃん、おはよう……」

 完全に恋する乙女の瞳だった。

 さすがに「昨夜は部長としましたか」とは女の子同士でも聞き辛い。

私は「…………でさあ……」と話題を切り出した。

 奈々葉が、はい、と言いませんようにと、ココロの中で唱える。

「あっ……うん……」

「そっ……か……」

 部長の家で部屋を片付けたのは、たぶん奈々葉だ。

「だけど……」と、奈々葉が続ける。……だけど?

「……ああ、いい、いいよ。奈々葉。親友でも言えないこともあると思うし……」と言うと、私は自分の席を立った。

 ああ、ちゃんと部長に『セフレでもいいから』と伝えておくんだった。だけど、割り切ったセフレなんて辛すぎるよ。

 私の悪いところだ。いつも他人のものが欲しくなってしまう。こうなってから気づいても遅過ぎるよ。

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