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　奈々葉ぼんやりとしてスマホを見たり、急にニコッと微笑んだり自分の世界にいるようだった。
　
「コラ！」
　
　私は奈々葉の耳元でパチンと自分の手を叩く。
　
「な、何よ？」
　
　奈々葉がぼんやりと私の目を見た。うるうるしたその目は恋する乙女のようだ。
　
「奈々葉……」
　
　私は自分の腕時計を指差した。時計の針は十二時だ。
　
「どうしたの？　奈々葉、恋する乙女みたいな顔してる」
　
「恋する……何それ？」

　奈々葉がプッと吹き出した。
　
「ボンヤリ自分の顔見てたり、って思えば、ニッコリ笑ったり、今だって……」
　
「今も？」
　
「奈々葉の目、ウルウルしてるし……。私、聞くよ。話……」
　
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　私達は社の展望デッキで食事をすることにした。
　
　展望デッキというのは聞こえがいいが、昼食の時だけ社員に開放される最上階の部屋で、通常は資料室として使われている部屋だ。その奥で数名の者がざわざわと食事をとりながら話す声がしていた。
　
　奈々葉と私は入り口から一番遠い南側の窓際に座った。