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私、普通の恋愛は無理なんです。

第5章 筋肉痛の朝

 菜々葉は昨夜の出来事を全て話してくれた。
 
「えっ、う、ウソ……ちゅ、チュウ……?!」
 
 あまりにも急な出来事で、私は素頓狂な声を上げてしまった。
 
 周囲の話し声のボリュームが小さくなった。
 
 奈々葉は目だけで辺りを見渡して、人差し指を自分の唇に当てる。顔を縦に振りながら……。
 
「……ホント……なの……」
 
「……で、部長は……?」
 
「…………忘れてるみたい……完全に……それに私……」
 
 ご主人はどうするの、とふと考える。
 
「……二人の恋は険しい……よね?」と、菜々葉の顔を覗き込んだ。
 
 奈々葉の頬を伝った涙が、彼女のお箸を持つ手に落ちる。
 
 ポーチからポケットティッシュを奈々葉に渡した。
 
「…………うん……色々……ね?」
 
「……うまく行くといいね? 私、応援していい?」
 
 私は心にもないことを言ってしまった。

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