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僕はアノ音を聞いてしまった。

第3章 リビングルーム

 マサミが合わせた淳也の手首をリボンで巻き始めた。
 
 ――えっ……?
 
 リボンは蝶の形に結えられる。彼は手のひらを合わせたままになった。それは、キツくはなかった。が、しっかりと結わえてあった。
 
 マサミは「ヨシ……」と満足気に大きな目を細めた。
 
「叔母さん、これって……」
 
「淳也くん…………?」
 
 人懐っこいアヒルのような口元が淳也に近づいた。甘い化粧品の匂いのあとに、ミントの香りが鼻腔をくすぐった。
 
 ――あっ……!
 
 マサミは顔を斜めに傾けて、淳也の首筋に唇を寄せる。まるで人の生き血を吸うドラキュラのように見えた。
 
 手首のリボンがキュッと引き締まる。
 
「……たっ!」
 
 細いそれが手首の皮膚に喰い込んだ。

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