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歪ーいびつー

第7章 ー5月ー



「夢ちゃん! 」

駆け寄ってきた隼人くんが、私の身体を支えるようにして肩を掴んだ。

「いやぁーー!……っ……いやあぁぁ! 」

あまりの恐怖に驚いてしまった私は、隼人くんを突き放すとそのまま床へと倒れ込み、動かなくなった身体をカタカタと震わせた。

「夢ちゃーー
「いいよ、俺がやるから」

隼人くんの言葉を遮って近付いて来た楓くんは、私のすぐ側でしゃがむと私の背中を優しく摩《さす》り始める。

「……夢ちゃん、大丈夫。大丈夫だよ」

背中を摩《さす》りながら優しく声を掛けてくれる楓くんは、一度私をそっと抱きしめると、「夢ちゃん、保健室に行こうね」と言って私を抱き上げて教室を後にしたーー。

保健室に着くと、泣きじゃくる私に驚いた先生がどうしたのかと聞いてきたが、楓くんは「ちょっと色々あって……休ませてあげて下さい」とだけ伝えて私をベットへと運んでくれる。

「夢ちゃん、これ……奏多にやられたの? 」

優しくベットへ寝かせてくれた楓くんは、私の首元を触ると静かに口を開いた。

『虫には気をつけるんだよ』

先程そう奏多くんに言われた事を思い出す。
あの箱に入っていた虫は奏多くんがやったのだろうか?
何で……何でこんな事をするの……?
私はこの現状がとても辛くて悲しくて……そしてそれと同時にとても怖くもあり、楓くんの言葉に答える事なくただ涙を流すだけだった。

「……今はゆっくり休んで」

私の無言を肯定と捉えたのか、楓くんは一瞬悲しそうな顔をすると、私の頭を優しく撫でてから保健室を後にした。



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