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歪ーいびつー

第8章 朱莉



「……気持ち悪い」

今朝、夢の机から出てきた虫を思い出してブルリと身体を震わせる。
あれは悪趣味すぎる。一体誰がやったんだろう……。
そんな事を考えながら廊下を歩いていると、女とイチャつく楓がいた。

楓に擦り寄りワイシャツの胸元に手を忍ばせる女。

「今はそんな気分じゃないんだよねー。ごめんね」

そう言って女の手を掴むと退かそうとする楓。
「え~いいじゃ~ん」と甘ったるい声を出す女。

「楓いつもコレ付けてるよね~」
「コレは触っちゃダーメ」
「え~何で~? ……あ、今度お揃いの買って付けようよ~」
「俺達そんな関係じゃないでしょ? 」

そう言ってニッコリ微笑むと、ネックレスをワイシャツの中へと戻す楓。
すると、楓がこちらに気付いて目が合った。

「お盛んな事ですねー」

私はそう告げると、二人の目の前を横切る。
「何あれ~。感じわるぅ~い」と女が言っている声が後ろから聞こえたが、私はそんな事など気にせずに立ち去ると自分の教室へと向かった。

教室の扉を開けると、放課後という事もあってそこには誰一人として居らず、ガランとしている。
教室の後ろにあるロッカーの前まで行くと、私は【藍原】とシールの貼られた扉を開けた。
中からジャージを取り出すとゴミ箱の前に立ち、制服のポケットに忍ばせていたハサミを取り出してジャージを切り刻む。

「……夢が悪いんだから」

そう呟くと、切り刻んだジャージをゴミ箱の中へ捨てた。

ーーーガラッ

「ーー朱莉」

ーーー!?

突然教室の扉が開いて声を掛けられ、私の身体はビクリと小さく震える。
その声の主は私の側までやってくると、チラリとゴミ箱に視線を向けてから口を開いた。

「やっぱり朱莉か」

恐る恐る視線を向けると、そこには無表情な顔をして私を見つめる奏多がいたーー。



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