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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第12章 君と私とロバと……



チラリと横を見ると、お兄ちゃんに付き合わされて来た彩奈が目に入る。

何か本当にごめん……彩奈。

「狼は響だよ……」

お兄ちゃんの声に視線を戻すと、呆れた様に私を見て溜息を吐いた。

「……ひぃくんは王子様だよ」

まぁ……中身はちょっと変だけど……。
狼になんて似ていない。

「……お前そんなんじゃすぐ響に食われるぞ」
「は……?」

いくらひぃくんが変わってるからって、人なんか食べないよ。
……失礼しちゃう。

人喰いは鬼の方だよ。

「それはお兄ちゃんでしょ!」
「はっ?!」
「人喰い鬼っ!」

お兄ちゃんに悪態を吐いた私は、サッとひぃくんの後ろへ隠れる。

そんな私を見て、クスクスと笑うひぃくん。
……どこが狼に見えるって言うのよ。

こんなに優しい顔してるじゃない。

「……お前は全然わかってないよ」

そう言って呆れた顔をするお兄ちゃん。

あれ?
怒らないの?

実はビクビクしていた私。
安心すると、ひぃくんが握っているドーナツに目がいく。

「食べるー?」

私の視線に気付いたひぃくんが、ニッコリと微笑んでドーナツを差し出す。

「うんっ!」

私は瞳を輝かせて返事をすると、目の前に差し出されたドーナツにパクリと食いついた。

「……お前が呑気すぎて心配だよ、俺は……」

私を見て溜息混じりにそう言ったお兄ちゃん。

呑気なのは私じゃなくてひぃくんだよ。
……お兄ちゃんて何て失礼なの。

失礼だと怒りながら、ひぃくんに対して失礼な事を思う私。

差し出されたドーナツをパクパクと食べる私の横で、お兄ちゃんはずっと呆れた顔をして私を見ていたーー。


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