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美少女は保護られる〜私の幼なじみはちょっと変〜

第15章 君とハッピーバレンタイン



「じゃあ俺と一緒だねーっ」

そう言って小首を傾げてフニャッと笑ったひぃくん。

そ、そうなんだ……。
地球が見えなくなるぐらいってどういう事?

イマイチ理解できないその表現を疑問に思いながらも、目の前で嬉しそうに微笑むひぃくんを見て思わず笑みが溢れる。

「ねぇ、花音。花音からキスしてくれる? 」
「えっ!? 」
「いっぱい好きならいいでしょ? 」

そう言って目を閉じてしまったひぃくん。

自分からするって凄く恥ずかしいんだけどなぁ……。

そんな躊躇《ためら》いはあるものの、大好きなのは本当だし、正直、私だってひぃくんとキスしたい。

そう思った私は、意を決してひぃくんの顔に近付いた。
ーーとその時、私の視界に入った小さい何か。

チラリと視線を横に移すと、そこには天井から垂れ下がった小さな蜘蛛が……。

ーーー!!?

「ひっ……! いやぁーっっ!!! 」

ーーーバチンッ

驚きに思わず仰け反った私は、大声を上げると目の前のひぃくんを突き飛ばした。

その数秒後、もの勢い勢いで開け放たれた私の部屋の扉。

ーーーバンッ!

「おい響っ!! お前な……っ?! 」

鬼のような形相で怒鳴りながら入ってきたお兄ちゃんは、目の前のひぃくんを見て動きを止めた。

「おにっ……お兄ちゃんっ! 蜘蛛っ! 蜘蛛取ってぇー! 蜘蛛っ! 蜘蛛ぉー! 」

ヒーヒーと悲鳴を上げながら蜘蛛を退治しろと指差す私。
その横では、体育座りをして両手で顔を覆いメソメソと泣くひぃくんの姿。

そんな私達を見て、懸命に状況を把握しようとするお兄ちゃん。

「いっぱい好きって言ったのに……。嫌って……嫌って……言った……」

ブツブツと小さく呟きながら、両手で顔を覆ってシクシクと涙を流すひぃくん。

それを黙って見ていたお兄ちゃんは、大きく溜息を吐くと口を開いた。

「……ほんと、何なんだよお前ら……」

そんな愚痴を溢しながらも、素早く蜘蛛を退治してくれたお兄ちゃん。

「……おい、響。今氷持ってきてやるから……ソレ、ちゃんと冷やしとけよ」

そう言って呆れたような顔をするお兄ちゃん。
その視線の先では、未だひぃくんがシクシクと泣き続けている。

体育座りをして部屋の隅で一人泣き続けるひぃくん。
その顔には、私の手形がクッキリと赤く残っていたーー。


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